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現状回復義務 事務所・店舗編

 先日、店舗事務所の原状回復の見積もりの立会をしてきました。

 住宅と違って、店舗事務所とでは大きな違いがあることが分かります。

 住宅用賃貸では個人の契約となり、消費者保護の観点から
 『 消費者契約法 』 が適用されるので、経年劣化・自然損耗は
 日常生活をしていればやむをえないこととしてとらえられています。
 壁クロスの日焼けや冷蔵庫・テレビの電気焼けなど・・。
 
 しかし、事業用ともなれば用途が違うので原状回復の特約が広く
 認められているのです。

 店舗などの借主は、営利目的での利用が主となる事業用賃貸となるので
 多数の人員の出入りをはじめ、通常使用を超える損耗が想定される
 ことから、経年劣化による自然損耗とは認められず、原状回復特約が
 広く認められているということです。

 判例でも店舗事務所の場合は、退去する際は借りた時と同等の状態に
 原状回復して引き渡すということが出ています。

  ≪参考≫
  「 東京高判平成12年12月27日(要旨)」
  一般にオフィスビルの賃貸借においては、次の賃借人に賃貸する必要から、
  契約終了に際し、賃借人に賃貸物件のクロスや床板、照明器具などを取替える、
  場合によっては天井を塗り替えることまで原状回復義務を課する旨の特約が付
  される場合が多いことが認められる。オフィスビルの原状回復費用の額は、
  賃借人の建物の使用方法によって異なり、損耗の状況によっては相当高額になる
  ことがあるが、使用方法によって異なる原状回復費用は賃借人の負担とするのが
  相当であることが、かかる特約がなされる理由である。
  もしそうしない場合には右のような原状回復費用は、自ずから賃料の額に反映し、
  賃料額の高騰に繋がるだけでなく、賃借人が入居している期間は専ら賃借人側の
  事情に左右され、賃貸人においてこれを予測することは困難であるため、適正な
  原状回復費用をあらかじめ賃料に含めて徴収することは現実的には不可能である
  ことから、原状回復費用を賃料に含めないで、賃借人が退去する際に賃借時と同
  等の状態にまで原状回復させる義務を負わせることは、経済的にも合理性がある
  と考える。

  
  住居の賃貸借契約の個人としての消費者を守るということと違い、店舗事務所の
  契約は、その場所で営業する事業者としての契約になるので貸主・借主が対等で
  あるということですね。
  

前回の「原状回復義務」の記事(住宅編)